海辺の公園

赤い公園のファンブログです。

5thアルバム『THE PARK』(DISC 2)

全体

『THE PARK』の初回限定版についていた付属CD。2019年に二回行ったYouTube Liveの音源を8曲収録している。リリース時点では6曲までが他の音源に未収録の曲で(のちに「衛星」が『オレンジ/pray』に収録)、ちょっとした新作ミニアルバムぐらいのボリュームがある。
スタジオやライヴハウスで4人だけで演奏しているためシンプルなアレンジが多いが、その分一音一音をしっかり聴ける楽しさがある。特に石野さんの歌のうまさをあらためて感じられる演奏が多い。最初の3曲が7月、後ろの5曲が11月のライヴから録られている。

  • 現在は価格が高騰して初回盤は入手困難だが、聴くだけであればTSUTAYA DISCASで借りることができる。CDレンタルは消えゆく定めの商売だと思っていたが、この件に遭ってからは否応なしに少し考えが変わった。例えば公立の図書館では普通は初回盤は買わないし、初回限定という立てつけである以上配信に回ることも考えづらい。自分もTSUTAYAがなければこれを聴くことはかなわなかっただろう(いつか大枚をはたいていたかもしれないが……)。このような意義があるとは思ってもみなかった。TSUTAYAがこのことの意義をどのぐらい自覚しているかはわからない。
    • 冒頭に書いた二回のYouTube LiveがいずれもBlu-Ray『THE LAST LIVE』のDISC 2に収録されたため、ある意味では再販が果たされた。しかしDISC 2は初回限定盤なので、結局根本的な問題としては解決していない。
  • 付録CDであるため地味に「歌詞カードがない」という欠点があり、聴き取りづらい歌詞についてはファンの間でも見解の不一致がある。
    • 上に書いた通り全曲『THE LAST LIVE』のDISC 2に収録されたのだが、案の定というべきか歌詞カードはつかなかったので、こちらの問題も解決されなかった。
    • 歌詞については補遺も参照されたし。

衛星 (broadcast edition)

Beautiful (broadcast edition)

なにかが迫ってくるようなイントロから、かわいらしい「B! BBB! B! B!」の繰り返し、「まぶしすぎるぜぇ~」「百も二百もついてくる」と愉快な歌詞が連発される楽しい曲。歪んだベースの上でギターが跳ねるように奏でられ、石野さんがのびのびと歌う。
ライヴでは指を差しながら歌うのが定番だったようで、『THE LAST LIVE』のDISC 2に収録されているShoka Tour DAY 0では石野さんがぴょんぴょん跳ねながら客席やカメラのほうを指さす様子が映されている。めちゃくちゃライヴ向きの曲なので、これは生で見てみたかった。

  • BではなくPという説もある。

未来 (broadcast edition)

石 (broadcast edition)

  • 『THE PARK』メイキングでみんなでお弁当を食べるときにふざけてこの曲のサビの替え歌を歌っている場面がある。「♪えびちーりとしゅうーまい、えびちーりとしゅうーまい、……Chinese style」というもの。

おそろい (broadcast edition)

この曲は作詞作曲とも藤本さん単独の名義。カバー以外では津野さんが作曲に入っていない曲は唯一だと思う。
短い曲だけれどなにもかもよくできていて、どこかかわいくて、とてもせつない。わけてもコーラスが印象的で、サビの前後半それぞれがすごく効果的に響く。どっちも歌川さんと津野さんとふたりでやっている。
サビの歌詞は別に悲しくないのに聴いていると少し泣きそうになってしまう。特に2番の「♪ふたっりのー ふたっりでー」は最高に好き。DISC 2のそぎ落とされたアレンジが一番よく合っている曲と思うが、スタジオ版も聴いてみたかった。作詞作曲は藤本さんだが、ベースは案外オーソドックスな印象を受けた。
スローモーションブルーといい、藤本さんも相当なポップセンスがある。またどこかで新曲を聴ければと思う。

Unite (broadcast edition)

唯一DISC1とDISC2に両方収録されている曲。

Highway Cabriolet (broadcast edition)

輝き (broadcast edition)

5thアルバム『THE PARK』(DISC 1)

全体

石野さんが加入してから初のフルアルバム。『消えない - EP』から約半年でたたみかけるようにリリースしたアルバムで、前作を超える大傑作となった。
自分としては初めて聴いたフルアルバムだが、今に至るまでこのアルバムが一番好きだ。楽曲の幅の広さはこのバンドならではで、どの曲も強いメロディと心に響く歌詞というしっかりした骨格を持っているうえに、自由で細かいアレンジとそれをしっかり聴かせる演奏が揃っていて本当に飽きることがない。曲順も完璧といっていいほどうまく並べられていて、アルバム全体としてもしっかり作品になっている。
赤い公園の、この先をもっともっと聴きたかったし見たかった。それでも、このアルバムを作ってくれてほんとうによかったと思う。

Mutant

鼓膜にぶつかってくるようなドラムのイントロやAメロのちょっとラップっぽい節回しを聞いて、こんな曲もやるんだという第一印象だった。Bメロでメロディアスになるんだけど、ここは伴奏のギターの絡み方が見事。特に2番の「名前なんてAかBか ただの通りすがり」でギターが途切れ途切れになるのがめちゃくちゃいい。こういう演奏はギタリスト津野さんの真骨頂と思う。
サビの「見せつけろ愛」のところは80年代ふうの大仰なアレンジで面白い。このバンドは新しいとか古いとかをあんまり気にしないように見える。
最初のサビの「…はー。」(歌詞カードにこう書かれている)のところがもう完璧に「はー。」と聞こえてすごく好きなんだけど、この「はー。」といい、サビの大仰なアレンジといい、ちょっと皮肉っぽいニュアンスがある曲のように思う。でも曲自体は本当にかっこよくて、そこがとてもよい。

ところでWhat's IN?のインタビューのこのやりとりが好き。

石野 19年生きてて、「お前個性出せや」みたいなことって言われるじゃないですか。
津野 その口調で言われるのね?
What's in? Tokyo -- 赤い公園 新体制で仕上げた“ファーストアルバム”。温めてきたセルフタイトル『THE PARK』に込めた想い。4人の素直な胸の内を訊く。
発言の趣旨的には津野さんの言葉をカットしてもいい流れだが、インタビュアーは拾ってくれた。これって俳句みたいなことで、この一言があると、ああ、石野さんが声色を使ったのかな、とか、津野さんが思わずつっこみたくなるような感じだったのかな、とか、こういうやりとりが成立する雰囲気なんだな、とか、言外の部分に想像がばっと広がる効果があると思っていて、こういう一言の取捨選択にインタビュアーの腕が出るという面はあるように思う。ともあれありがたい。手を合わせながら読みました。

紺に花

“ジェイポッパー”津野さんの本領発揮、ど直球のポップロックで題材も卒業、片思い。曲調はいさましくメロディと歌詞はあくまでも切ない。いろいろな人が言っているがこれをシングルカットしないのかというのが率直に驚き。まさにポップなあまのじゃくでむしろすごいが、この曲がシングルになったりMVが作られたりしていたらどうなっただろうと今となっては思う。
特設サイトのセルフライナーノーツで石野さんが、好きな人の前で声が高くなる感じを意識して歌ったというようなことを言っていて、そうきたか!!となった。それを頭に置いてサビをもう一度聞くと、ちょっとじっとしていられないような感覚が胸に湧いてくる。歌詞の中では物語が最後まで語られないのもにくい。歌川さんのコーラスも華やかな味わいを添えている。
この曲はアルバムの中でも一番好きな曲。ラストライヴでは初めてライヴで披露し、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。サビのところで石野さんが左手を上げて手首をくるくる回す振りがあって、桜の花びらをイメージしていると思うのだけど、それがとても可愛かった。

  • ギターソロの前半部は「誰かが言ってた」のサビ「あべこべの僕には~」部分と同じ旋律(rayfさんのツイートより。「歌の内容も近いので意図的な引用な気が。」とのこと)。

ジャンキー

聴いているとつい頭を小さく揺すってしまう、めちゃくちゃにノリのいい曲。冒頭に鍵を床に落とす音が入っている。硬い金属としかわからないのだけど、自分は鍵と思った。鍵を取り落とすのは、なんにせよout of controlな状態だと思う。
ベースラインがとにかくかっこよすぎてずっと聴いてしまう。珍しく歌詞の正味が少なめで繰り返しが多い曲なのだけど、その展開を藤本さんのベースが延々と先頭に立って引っ張っていく。コーラスが終わって最後のサビに入る直前の二小節にはしびれる。この溜めの気持ちよさ!
この曲はインスタライヴのヴァージョン(四人それぞれで宅録してそれをミックスしている)があるのだけど、そちらはシンプルなアレンジで、それでいてしっかりこの曲のノリのよさとかっこよさが伝わってくる。
ここまでの三曲、カラーはまるで違うけどどれもいい曲で、アルバムの最初の三曲としてすごくいいセットだと思う。

  • FOD オリジナルドラマ『シックスティーン症候群(シンドローム)』の主題歌。

絶対零度

空挺ドラゴンズ』のエンディング曲。「オレンジ」を好きになってから同じバンドの曲をさかのぼって探しているうちに何度か聴いて、タイアップにしてはとっつきづらい曲だな、と思っていた(余談だが「風が知ってる」にも全く同じことを思った)。実際いきなり耳に馴染むような曲ではないように思う。
いくつか提出したデモの中から「いちばんやばい曲を選んでもらった」と津野さんは言っていて、きっと意気に感じるところはあったのだろう。1クールのアニメのEDは「12回聞いてもらえる曲」だから、少し吞み込みづらくても深く刺さる曲を、という意図はあったのかもしれない。
繰り返し聴いていると、拍子の変化に伴う独特の緩急の変化が気持ちよくなってくる。ただBPMは変わっていないのでAメロやBメロも実際にはそこまで遅いわけではないのが面白い。サビに入るちょっと前に四拍子に変わるところはアガる。2回目のサビ前のハイハットも好き。
Bメロの美しさと静謐さは特筆すべきで、この曲の情景を形作っている。誤解を恐れずに言えば死の気配のある曲だと思う。

  • TLで「デモって実際のところどんなもんを提出するんだろう?」という疑問からはじまって、楽曲がエンディングに収められるまでどういう工程を経るのだろうみたいな話になって面白かった(スレッド)。自分の勝手な想像としては、尺はもともと決まっているはずで(空挺ドラゴンズだと90秒、たぶん大抵のアニメで同じ)、曲は尺とは関係なく作るが、それはそれとして90秒に縮めるとしたらどうするかぐらいはぼんやり想定して書くだろう、という感じ。「アラバの海の~」から「~労られ終える命か」までがおよそ92秒なので、前奏を少し足して途中をどこか切り詰めて……ぐらいの想像はしていたのではないかな、などと妄想したりした。実際のエンディングでは前奏が少し入り、Aメロの二回目がカットされ、サビの後最後の「アラバの海の~」まで飛んで終わりという構成になっている。90秒って短いね~
  • Aメロの前半は「未来」(→『THE PARK (DISC 2)』)のAメロの前半と同じ旋律。(参照→s.h.i.氏のツイート

Unite

控えめなキーボードのイントロで珍しく静かな曲だなーと思ってると一番も終わらないうちに大仰と言えるほどのアレンジになっている。曲全体にひとつの大きなクレッシェンドがつけられているような構成で、最後の「yeah」まで延々と密度が上がっていく。
石野さんのヴォーカルをフィーチャーした曲という印象で(DISC 2のヴァージョンを聴いてよりその印象が強くなった)、石野さんもそれにしっかり応えている。珍しくフェイドアウトで終わるが、赤い公園の曲でフェイドアウトで終わる曲は数えるほどしかないのではないだろうか。

ソナチネ

面白いイントロ?でこれはけっこう好き。歌始まりのヴァリアントとしてはよくあるやつなのかもしれないけど、自分はあまり聞いたことがなかった(忘れているだけの可能性が高い)。冒頭の歌詞がよくて、歌声も柔らかくて、平和な陽だまりのような印象。
ところが歌詞を読み返すとそもそも冒頭の時点でこの恋は終わっていて、その追憶と悔恨を歌っている。津野さんもインタビューで「大丈夫じゃないほうの大丈夫」であると認めている。サビの歌声も切実で伴奏も一気に盛り上げてくる。
石野さんはこの曲からスーラの「釣り人」という絵を連想したと言っていて、どんな絵か知らなかったので調べてみたが、わかるようなわからないようなという絶妙なところで面白い。「unite」はハンマースホイっぽいと言っていて、そっちはなんとなくわかる。

chiffon girl (feat. Pecori(ODD Foot Works))

Aメロの「ふ み だして きた」のところがめちゃくちゃすごい。隙間のところにガラスを引っ掻くみたいな音が入って、最初本気でなんだこりゃと思ったけど聴きこんでいくとこれが気持ちよくなってくる。こういうのを狙って作れるセンスには舌を巻く。あとはサビの「なあああああああああああああい」。これは書くほうも書くほうだし歌うほうも歌うほうだと思う。津野さんと石野さんが出会ってよかった。
Pecori氏のラップは雰囲気がある。特設サイトのセルフライナーノーツで石野さんが「歌の比率は自分のほうが多いのに、ラップで完全に振り回されている」というようなことを言っていたけれど完全に同感で、ゲストを呼んだ曲の完成形態としては最高のものではないだろうか。
「背伸びの汗がしたたる」は可愛さと色気の入り混じった表現で好き。こういってはなんだが津野さんの歌詞にはあまり見られないたぐいの描写で(身体的表現が少ないと思う)、よけいにぐっとくる。

夜の公園

この曲はUKロックっぽい。ギターのイントロとか、ストリングスっぽい音が入るところとか、ちょっと切ない歌詞とか。最後なんて「わたしじゃだめですか」で終わってよさそうなのにそこからひとしきりギターのフレーズが入って、そのあとで終わる。
歌詞はぎりぎりあざとい、ぐらいの感じ。ちゃんとした部屋着、並ぶブランコの距離、と細かい描写が情景の解像度を上げている。一緒に風邪をひいて嬉しい、というのがせつなすぎる。風邪ですらもらってうれしいのに、相手は別のだれかに夢中なのだ。

冒頭から「えい おー えい おー」というサンプリング?が入るのと、その直前に入るぽえーんって音の響きがとてもやわらかくて好き。イントロに限らず全体にあたたかい雰囲気のある曲で、希望の気配にあふれている。タイトルにたがわぬ夜明けの曲。サビのメロディと伴奏が美しく、石野さんの歌声ものびやかで、それでもあくまでも柔らかに耳に響く。同じように広がりを感じさせる曲でも、「紺に花」では上ずる声が春の白っぽい青空を思わせたのが、この曲では薄明まじりのミッドナイトブルーだ。
歌詞は明らかに再生を題材にしていて、やはりバンドの状況とリンクしていたのかなと思う。リセットボタンの壊れた、というのは、佐藤さんが辞めてしまったときに、「私たちも止めなかったわけだから」と振り返った津野さんの言葉につながるのだろうか。
折り直した鶴というモチーフはユニークでキュートで、津野さんらしい気がする。もう追いつけはしないというのはなにを指していたのだろう。漠然と、具体的な何かや誰かではなかったのではないかと自分は考えていて、強いて言えばどこかで違う分岐を選んでいた自分たちみたいなものを想像していたのかなと思う。これは根拠のない妄想。

KILT OF MANTRA

「曙」から続く朝の歌。こちらは全員のコーラスもあって、かなりかわいい仕上がりになっている。歌詞を除けばポップでリズミカルな曲で、サビのところでドラムがつったかたったか細かく刻んでるのが好き。
特設サイトのセルフライナーノーツで津野さんがバグパイプに言及していて、なんとなく実際にバグパイプを入れてみたかったんじゃないかなという口ぶりにも思えるのだけど、実際にはあまりそれらしい音色は使われていない。間奏とかにいきなり入っているのを聞いてみたかった気もする。
さらっと歌詞に出てくる「タータン」は実は厳密に図柄が管理されていて、この柄は誰のタータン、というのは一意に定められている。津野さんは赤い公園のタータンはどんな柄だと想像していたのかな。

  • この曲ではBメロ以外はファとシを用いないいわゆるスコットランド音階を用いているとのこと。(鶸潟ロキさんのツイート)自分は言われるまでまったくわからなかった。
    • スコットランド音階は日本のいわゆる「よな抜き」と同じらしい。他の国にもぽつぽつあるらしい。面白い。

yumeutsutsu

ひずんだギターのイントロから突っ走る、直球のロック。このギターの音は津野さんはかなり気に入っていたようで、あちこちで「すごい音でしょ」的な言及をしている。実際言われないとギターってわからないかもしれん。三分ちょうどのアップテンポなナンバーだが、藤本さんと歌川さんのリズム隊はこういう曲でもつんのめらない。BPMもたぶんそこまで高くはなくて、あらためて聴くと不思議なスピード感がある。
すがすがしいほどまっすぐなメッセージが連発される曲だけど、ギターはかなりひずんでいるし、ベースも結構複雑なフレーズを奏でている。最後に書いた曲を最後に置いたら浮いてしまいそうなものだけどそうはなっていない、赤い公園的ポップセンス。

インタビューとか

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MV

ジャンキー

https://www.youtube.com/watch?v=lY5cElAjEQo
メンバーの写真をあしらったいろんな架空の商品が登場するちょっとかわいいビデオ。しっかり作りこまれてはいるが惜しむらくは楽曲の雰囲気とあまり合っていない。まあそういうこともあるとは思うが、すごくいい曲だけに惜しい。

絶対零度

https://www.youtube.com/watch?v=B7HeN3JO9OI
砂漠をイメージした舞台の上で四人が少し離れて向き合って演奏し、その間や周りでダンサーが踊る、めちゃくちゃかっこいい映像。モノクロなのもこの曲に合っているし、曲の拍子が変わるのとダンサーたちの動きが呼応しているのがいいんだよね……。サビのところで石野さんの後ろから手がわらわら伸びてくるところは妙な色っぽさがあると思う。監督とコレオグラファーは『消えない - EP』の三作に続いて志村知晴氏。

夜の公園(リリックビデオ)

https://www.youtube.com/watch?v=DEgTUrLUbe8
空挺ドラゴンズ』原作者の桑原太矩氏が描き下ろしたイラストに歌詞を記載した紙芝居式の動画。はっきりした制作の経緯はわからないが、タイアップで生まれた縁がしっかりつながっていて次のコラボレイションにつながったことにはこちらまで嬉しくなった。おたがいプロなのだからタイアップなんてその場限りの関係で全然いいと思うしそういうものだと思うが、それを超えた関係があったというのはぐっと来るものがある。描いてくれたイラストもまたいいんだよね。ビジュアルを固定してしまうことには想像の自由度を奪う側面もあるけど、それ以上に情景を補完してくれたし一見さんの目を引く力もあったと思う。

ところでこの動画、最後のサビの前にばばばばっと「わたし」の内心の声が字幕で出るのだけど、あれは誰が書いたのだろうというのは少し気になっている。内容はこんな感じ。
私のことどう思ってるんだろう/あなたが好き/臆病なのは私の方だ/もっと悩んでいて/うまくいかないで欲しい/わがままなのは私の方だ/ドキドキする/一緒にいると緊張する/その手に触れたい/もう少し近づきたい/呼び出してくれて嬉しい/一緒にいたい/そばにいたい/優しくしたい/そんな子はやめちゃえ/帰りたくない
歌詞から外れた内容はひとつもないのだけど、たとえば「あなたが好き」はかなり踏み込んでいて、そう思うと津野さんが書いたわけではないのかな。

yumeutsutsu

https://www.youtube.com/watch?v=CQ4Za-wJWaI
メンバーみんながそれぞれにトランポリンで跳ねているちょっとかわいい映像。この曲の独特の速度感と案外マッチしていて気持ちいい。
最後マットレスみたいなのの上に四人でぼふってダイブして、そのうえに薄手の羽根布団がふわってかかって終わるのだけど、YouTubeのコメント欄で「お布団で寝てる四人に掛け布団ファサッってやつ考えた人ありがとうございますありがとうございます。 」って書いている人がいて笑ってしまった。ばかだねー。でも気持ちはわかる。志村監督だとおもう。

  • 赤すぎる公園内にこのMVのメイキング映像があるのだが、見ている感じ石野さんあんまり運動神経よくなさそうだなという印象がある(余計なお世話)。

『THE PARK』メイキング

https://www.youtube.com/watch?v=0sId7vNwM-Q
石野さん加入(というかソニー移籍)以後「情熱公園」が作られなくなってしまったので、貴重なメイキング映像。9分しかないのでもっと見せてくれーとは思ってしまうが、それでも作ってくれたのはありがたい。「エビチリとシュウマイ」(DISC 2の「石」参照)はこの動画に含まれている。

  • これも志村監督が作ったとのこと。

ミニアルバム『消えない - EP』

全体

石野さんが入ってから初めての円盤(音源としては配信のみの「凛々爛々」がある)。Re: First Tourを経て満を持してのリリースだった。
鋭くてユニークなロックサウンドの「消えない」、アーバンでちょっとアンニュイな「Highway Cabriolet」、テンション上がるサウンドに一歩引いた歌詞の乗る「凛々爛々」、打ち込みのヒップホップ「Yo-Ho」など様々な色の曲が収められた名盤だが商業的には芳しくなかったらしい。

消えない

赤い公園はイントロがいい曲の多いバンドだが*1、わけてもこの曲は一二を争うと思う。鋭いギターのカッティングにドラムが割って入って絡んでいくところは何百回でも聴きたいかっこよさだ。
石野さんのヴォーカルは少し硬く、切羽詰まっている感じがする。ゆうパラ水曜日最終回ではそれを「理子ちゃんが緊張している」と言っていたのだが、自分はこれも石野さんの表現だと思っている。そしてこの緊張感が伴奏の緊張感ともよく嚙み合っていると思う。
この曲はMVもよくて、石野さんの鬼気迫るダンスに目が行くけど、右側でギターを奏でる津野さんがどこか常に余裕のある感じでよい。そして半分の画面では狭すぎるとばかりに暴れている藤本さんのベースが、最後四小節?長く響いて終わるのがほんとうに素晴らしい。

Highway Cabriolet

ちょっと甘いヴォーカルと、ぼわんと響くギターの音に冒頭から引き込まれる。Bメロでぐうっと高くなってから、サビ前の「どうにもならない」のところで下がるところが気持ちいい。熱帯夜のけだるい雰囲気がメロディとヴォーカルで体現されている。
1番ではシンプルなビートを刻んでるベースが2番で全然違うこと始めておおってなる。このグルーヴと、ギターの絡み方が絶妙でほんとに好き。サビのハンドクラップは「思わず入れちゃった」みたいな感じがあって、アレンジしながらものりのりだったのでは。

この曲は佐藤さん脱退後の三人体制の時に初めて披露されたらしいけれど、石野さんを迎えてから生まれ変わり、何度も音源になっている(これのほかに『THE PARK』のCD2と、2020年のインスタライヴ)。都度アレンジは変わるがどれがいいとも決めがたいほどどのヴァージョンもよくて、楽曲の骨の部分が強いのだろうと思う。ラストライヴでは「さんこいち」(石野さん、歌川さん、藤本さんの三人)で演じていたが、これも実によかった。

ところで「煙を吐いてる遊園地」は津野さんの中では四日市のコンビナートのイメージだったらしいという話があるそうだが、これなんかは本人の着想元と出力されたものに乖離がある例かなと思う。四日市だとしたらアーバンじゃなくてインダストリアルになっちゃうもんな。

凛々爛々

ハイハットの連打から始まる威勢のいい曲で、サビの手前までは溜めが利いている一方で、歌詞、特に一番はちょっと挑戦的な内容になっている。とはいっても「愛をわけてあげる」らしいんだけど。
サビに入るとメロディや伴奏ではその溜めが一気に解放され、反面歌詞は「ひと駅歩いてみようかな」「ひと息ついてみたりしようかな」「コーヒーでも飲もうかな」「一日の打ち上げでもしようかな」と緩めるような内容になる。シンプルだけど徹底的な対比。
というわけで、かわからないが、自分はこの曲にはちょっと多層的な印象を持っている。どういう曲というのを説明するのがむずかしい。

HEISEI

打ち込み?の短いフレーズが鳴ってから、いきなりノイズギターがじゃわわわと入ってきて面食らう。ちょっとホワイトノイズめいた音といい、箱に閉じ込めたような響きといい、シューゲイザーっぽいと言ってよかろうか。藤本さんによれば「耳栓のいらないマイブラ」。そのサウンドの上で石野さんが素晴らしくのびやかに歌う。「ラララララ」のやわらかいこと、サビの高音の美しいこと、メロディと歌(歌い手)がすごく上手く噛み合っている曲のひとつではないかと思う。
落ちサビで一旦ノイズが止み、ヴォーカルとキーボード(?)が絡む、こういうところが本当にうまくて、津野さんのすごいところ。後半にはちょっぴり鉄琴が使われている。いろいろな曲でちょっとずつ使われていて、初期のカウベル同様なにかシグネチャみたいな感じで入れていたのかもしれない。最後は冒頭の打ち込みっぽい音に戻って終わり。
ベースもなかなかすごくて、藤本さんが歪んだ音をぶいぶい鳴らしている。かっこいい。
この曲からは「夜の公園」へうっすら続く道が引かれたが、「Yo-Ho」ほどではないにしろ少し先が気になる、わりと面白い曲。

Yo-Ho

打ち込みをがっつり使った曲でほぼ生の楽器は入っていない、のかな? イヤホンで聴くと冒頭のループが左右でうねるように行き来して聞こえて、このうねりがトラック全体のフロウを規定しているように感じる。
曲が始まる前には鳥の声みたいなSEが入っていて、ベタに森の奥という舞台設定。歌詞に“ブロッケンの妖怪(ブロッケン現象)”が出てくるので山奥と言ってしまってもいいのかも。出だしは珍しくファンタスティックな歌詞もあって、文字通りの牧歌的な雰囲気がある。
トラックのうねりと石野さんのリズム感が心地よくて、なんどとなく繰り返されるYo-Hoという響きも楽しい。生音がない曲だけれど、自分はすごく面白くていい曲だと思うし、こればっかりでは困るがEPに一曲入ってるぐらいなら全然いい。
ライヴでどう演じるかについてもすでに少なくともひとつ以上の答えは出ていて、津野さんのイマジネイションと幅の広さには感服するばかりだし、軽々やってのけるリズム隊のふたりもすごい。ラストライヴでは「さんこいち」(Highway Cabrioletの項参照)で見事に演じていた。
歌詞については言及しづらいが、中間部の「さしのべられた~」のところは際立って耳に残るし、野の花を踏みつけるというモチーフが「HEISEI」と二曲続けて登場するというのはある種のobsessionと言っていいように思う。そしてそのobsessionをバンドに起きた出来事と重ねるのはさほど無理な見立てではないだろうが、それは安直の誹りを受けてもまた仕方のないところかとも思う。

サウンド的にはこの曲から「Mutant」へうっすらとつながっているが(わずかに「sea」にもつながる)、おそらくもう少し別の方向へ向かう道もあったのではないかと思う。きっと津野さんはいろいろ考えていたはずだと想像する。その先にある音を、もっともっと聴いてみたかった。

MV

消えない

https://www.youtube.com/watch?v=boG1NpRoi44
画面を左右に二分割して、左半分は海岸で石野さんが踊り、右半分はスタジオで三人が演奏しているという構成のビデオ。まだ高校生で広島に住んでいた石野さんと、東京で活動していた楽器隊の物理的な距離をそのままフレームにしている。実際に海岸は広島で、スタジオは東京にある。途中彗星が飛ぶカットがあったり、最後に紙飛行機が横切ったりするものの、とうとう三人が相まみえることはないというのは大胆なストーリーで、実際に MV で四人が出会うのは翌年春の「凛々爛々」を待たなければいけなかった(同時期に石野さんも高校を卒業して東京に引っ越した)。当時駆け出しだったという志村知晴氏が監督と振り付けを担当している。石野さんのダンスは迫力があり、ここから始まるんだ、このまま消えてたまるかというバンドの気迫を表現して、一方で実際にバンドを続けてきた三人は楽しそうに演奏しながらいつか来る石野さんの合流を待っている。当時のファンはやきもきしただろうけど、そのころに焦って活動しなかった判断は間違っていなかったと自分は勝手に思っている。海岸がとにかくめちゃくちゃ綺麗で、こんなところで踊る石野さんを見られるだけでなんだかうれしい。

インタビューとか

インタビューのページに移しました。

*1:もちろんどのバンドのどんな曲でもイントロに力を入れるとは思う。

ベストアルバム『赤飯』

インタビューとか

『赤飯』特設サイト (Web Archive)
http://web.archive.org/web/20180213214006/http://akaiko-en.com/bestalbum
収録作品の羅列がすごい。ミュージックビデオ盤に『透明』入ってるんだな。

4thアルバム『熱唱サマー』

全体

アルバムとしては少々過剰で、「カメレオン」「闇夜に提灯」「AUN」と続く並びからして力が入りすぎている感じはする。聴くのにエネルギーが要る。シングルを三枚出して、並行してこれを作って、佐藤さんの脱退が決まって、バンド自体がハイになっていたのだろう。それと、作っている途中ではもうライヴはやらない予定だったのだそうで、ライヴで再現することを考えずに自由にできた、と津野さんは語っている。それでちょっと過剰な音作りになっている面はありそう。

やや緩急に乏しい印象はあるものの、いい曲は多く、よくこれほどいいメロディをばんばん書けるものだ。個人的には「AUN」と「ほら」がすごく好きだけど、「ジョーカー」「セミロング」「プラチナ」とシングル曲以外にも佳曲が多くて、なかなかにすごいアルバムと思う。

カメレオン

闇夜に提灯

AUN

冒頭に宇宙人という歌詞が出てくるのに引っ張られているかもしれないが、イントロの音ちょっと宇宙っぽいと思う*1。90年代スペースオペラ的というか、すこし昔の未来っぽい雰囲気があるような気がする。全体的にピコピコした音が多め。
いかにも熱唱サマー的でドラムもベースも忙しないが、サビの前半の流れるようなリズムの上でヴォーカルが「さーがせどさがっせーど」と歌うのが素晴らしい。この直後の「くやめどくやめど」のところは普通の符割りなのもまたにくい。
一番と二番のサビの後半にでてくる(「阿吽の呼吸を感じたい」のところとか)ドラムが「どどっじゃどどっじゃどどっじゃんじゃーん」てなるところが好き。伝わる気がしない。元マネージャーさんのことを歌った歌ということだけど、それを超えた普遍性のある詞だと思う。

最後の花

ジョーカー

プラチナ

セミロング

津野さんの「この長い髪をばっさり切って(中略)明日から新しい私になるの、っていう人ほどそんなに行かない」というコメントを先に知ってから聞いた曲だったのでちょっと斜に構えてしまったけど、曲は普通にポップでいい曲。耳あたりがよすぎるぐらい。
転調はさりげなく、を旨にしていた津野さんだけど、この曲では真逆の「転調しますよー」みたいな転調を大サビでやっている。それも含めてあえていわゆるオーソドックスな構成の曲をやってみた曲だったのかもしれない(この曲は津野さんがプロデュース)。
とはいえサビのベースはいつもにもましてかっこいいし、鍵盤(クラビネット、らしい)のぼよんぼよんした音とか、このバンドらしい要素はしっかりある。
けっこう長いこと「歌い手の女の子が別の女の子について歌った歌」だと思っていたので、ある時ふと歌詞を見て最後の最後に「僕のもとへ」とあるのを見てびっくりしてしまった。そう思って聴いてみるとまた違った味わいが出てくる。
津野さんの書く盆暗男子恋愛ソングはなにか妙なユーモアがあって、といってもこの曲と「誰かが言ってた」ぐらいしかないんだけど、もう少し聴いてみたかったと思う。

BEAR

ほら

アップテンポのロックンロールでアレンジもシンプルな王道の曲。メロディも歌詞もすごくよくて心に響く。津野さんが高校生の頃書いた曲ということだけど、驚くほどできはいい。アレンジもほぼそのままだというからひっくり返りそうになった。てっきりアレンジはやり直したものかと。
バンド始めたての高校生の初期衝動をキャリアを重ねたプロのバンドが演奏してパッケージしているというのと、歌詞の「大人になった僕らは何をしているのかな」というフレーズが呼応しているということも含めて、胸の熱くなる要素が詰まった曲だと思う。

それはそれとして、ゆうパラによると津野さんは作詞の後藤さんに卒業後会っていないそうで、連絡もしてなさそうなんだけど、こんな風に使うときって連絡ぐらいしないんだろうか。放送後になにかあったりしたのかな。

journey

勇敢なこども

MV

カメレオン

https://www.youtube.com/watch?v=pUPDDQlHyUU
音はアルバムのほうなのに映像が熱唱祭りだからちょっと違和感がある。MVの演奏シーンなんてみんな空演奏なんだけど、実際のライヴ映像だとまたちょっと違ってくるというか。

闇夜に提灯

https://www.youtube.com/watch?v=oU73rHJ6tWQ
最初の90秒だけ。最初モノクロなのにばって色つくのかっこいいんだけど、サムネイルの白塗りみたくなっちゃってる佐藤さんの顔が正直ちょっと怖い。

恋と嘘

https://www.youtube.com/watch?v=4HXlvBGBjO0
これはフルMV。ブレイク前の伊藤沙莉が主演で、赤い公園のメンバーは鏡の中に映りこんで登場するという、ちょっと面白い趣向(元ネタありそうな気もするけども)。

journey

https://www.youtube.com/watch?v=ISisSA_Gpnk
メンバーそれぞれが赤い衣装を着て別々の場所で倒れているという奇妙な映像。佐藤さんは海辺の崖の上、津野さんはビルの屋上、藤本さんは工場のそばの空き地に停めたオープンカーの座席、歌川さんは空のプールの底。佐藤さんは歌っているがあとの三人はびくともしない(涙を流すカットがある)。この四人で撮った最後のMVがこれというのもなかなかすごいと思う。

インタビューとか

インタビューのページに移しました。

*1:これは実際そうだったらしい→https://twitter.com/kome_suck/status/901319822939574272

3rdアルバム『純情ランドセル』

全体

ボール

『純情ランドセル』を初めてかけた時、この曲のイントロにはっとしたことを今でも憶えている。まさかこんな音が流れてくると思わなかったという驚きもあったし、その音自体の美しさにも心を動かされた。鉄琴の、ちょっと小気味いいフレーズ。
鉄琴にかぶせてドラムが入ってきて、そのあとキーボード、ベース、ギターも加わって重々しい音になるんだけどこれがかっこいい。地球を宇宙に浮かぶボールに見立てる大局観が音になっていて、鉄琴はその上で輝く街の光か、それとも降り注ぐ星の光か。
「ああ私たちは神様のボールに」のところのベースは音階も音の歪み具合もすごい。そして佐藤さんのヴォーカルもこの曲ではかっこよく、しかも“昭和の23歳”らしい色気があると思う。

東京

西東京

新事務所の社長からのお題で「東京」という曲を書きあげた津野さんがその照れを原動力に書いたセルフアンサーソング(だと思う)。しっとりした「東京」に対しておりゃーっという勢いに満ちたロックンロールで、意外なほどバンドにはまった曲。
こういう曲でも本当に歌川さんのドラムはつんのめらなくて正確に速い。ひずんだギターは不協和音をかき鳴らし、ベースが涼しい様子でぶっとい音を並べる。Bメロの「新宿下北原宿渋谷の」の小気味いいことと言ったらない。
そしてサビの舞台設定に新青梅街道と田無タワーを持ってくるサービス精神。石野さんが加入してからもフェスでやってたらしいのでローカルソングとはいえ本人たちも気に入っていたのだろう。ラストライヴでもメドレーの中で披露された。

ショートホープ

まずドラムに耳が行く。もともとは津野さんが自分で叩いて作ったということだけど、仕上がりはめっちゃかっこよくなった。インタビュアーが人力で叩いていることを驚いていた歌川さんのドラム、本当にクールで、四小節で曲の空気を作ってしまう。
この曲はリズム隊がとにかくよくて、藤本さんのベースは重く、少しだけ後ろに引っ張るみたいなグルーヴを作っていてこれまた渋い。そこへ乗る佐藤さんのヴォーカルが大人の雰囲気。「だーいだーい」のところのかすれ具合が絶妙で、めっちゃ聴かせる。
ラストライヴでもやってくれたのだけど、石野さんがこの曲を手のうちに入れつつあるのがわかって凄かった。たとえば「だいだい」のところはちゃんと石野さんのものになっていた。こういう驚きと楽しみをもっと味わいたかったなと思う。

デイドリーム

あなたのあのこ、いけないわたし

いろんな曲にこう言っているがこの曲もイントロがかっこいい。冒頭のバスドラムが二拍入ってからギターが「(ちっ)じゃっ」と入ってキーボードへつながる二秒ぐらいの流れがすごくいい。やっぱり津野さんが考えたんだろうか。
行き止まりの恋を描いた歌だが、曲は驚くほど明るく美しいので面食らう。イントロから使われるキーボードが耳に残るフレーズを奏でて印象的。サビはこれでもかとばかりに上昇音階の連発なのに、シーソーは決してひっくり返らない。2番のサビでは伴奏がほぼキーボードだけになって、ふわふわと浮かぶようなフレーズの上にヴォーカルが乗って、恋の不毛さが頂点に達する。曲と詞の組み合わせが見事だ。これははっきり意図してやったようで、津野さんによると

生々しい内容の歌詞ではあるんだけど、サウンドがポップだから許されるというのもあると思いますね。そのあたりはaikoさんを見習ってるところがあるかもしれない。aikoさんって重たい内容の曲であればあるほどアップテンポにしていると思うんですよね。
純情ランドセル特設サイト -- LINER NOTES & INTERVIEW (Web Archive)
とのこと。

喧嘩

14

ハンバーグ!

イントロの音がちょっとレトロフューチャーっぽい。後ろに入ってる「ぴゅーぴゅーぴゅーぴゅー」みたいな感じの音が特にそういう感じする。一周してかえって古くさくはない(かもしれない)。
一拍目をぐっとためる符割りがAメロ(「こっ ぴどく」)からBメロ(「もう ずーいぶん」)にかけて断続的に続いているのが面白くて、独特のリズムを作り出している。たぶん名前ありそうだけどわからない。パーカッションや全員のコーラスもちょこちょこ入っていて、わちゃわちゃしてる楽しい曲。その中でベースがよくて、ちょっとずつ入ってるいろんな楽器のフレーズをずーっと底で支えている。
アウトロはイントロと対になっていて、なんかやたらかっこいいというか、「どやっ」って感じで終わるのでおもしろい。
津野さんはマザコン感満載の歌詞と言っていたみたいだけどそこまでではなく、むしろかわいい歌詞だと思う。ひき肉こねた手のくだりが妙な生々しさがあって好き。

ナルコレプシー

冒頭から入ってる指パッチンの音が生々しい。人力ではあんな風に鳴らせないから津野さんはそれが面白いと思ってやっていると思うのだが、自分は最初腕が二本生えている機械みたいなのを想像してしまってちょっと怖いと思った。すぐに気にならなくなったけど。
キーボードの音がやわらかく、おだやかなメロディの曲。ヴォーカルはオーヴァーダビングを使い倒していて、左右から交互に聴こえてきてゆっくりと引きずりこまれるような感覚がある。眠たい眠たい眠たい眠たい眠たい眠たいおなかいっぱいのところは圧巻。
この曲の作詞は藤本さんと津野さんのふたりがクレジットされている。全体に退廃的というか破滅的で、この言い方もあれだけどうっすらと死の雰囲気がある。デビュー前の合宿で作った曲だそうで、津野さんが歌詞を書くのに苦しんでいたら、藤本さんが書いてあげるよと言って書いてきてくれたというような話だったと記憶しているが、歌詞が書けなくて困っている津野さんにこんな詞を持ってくる藤本さんはほんとうにすごい。そしてその歌詞からこの曲を作った津野さんも見事だ。

KOIKI

イントロのめっちゃかっこいいドラム
https://twitter.com/u__takos/status/654867349103771648
から、ドラムが一旦叩き止めてギターが入ってくるところがいい。序盤のメロディは佐藤さんのヴォーカルのクールなところがよく出るような音域で、佐藤さんもちょっとだけ抑えめに歌っているように思える。YouTubeのコメント欄で「ピチカートファイヴっぽい」と書いている人がいたが、この曲の、特に出だしは確かにピチカートファイヴっぽい。
ベースがまた変幻自在で、曲を通して様々なフレーズを奏でるが、落ちサビのところでギターと絡むところは絶品。そこから最後のサビに雪崩れこみ、ここだけ1ライン「あきれて笑うあなたのそばで」という詞が差しこまれる構成も見事と思う。

黄色い花

おやすみ

MV

KOIKI

https://www.youtube.com/watch?v=ZQuKiqq6sg8
演奏を始める時に津野さんが腕を伸ばして袖をまくるところが最高にかっこいい。YouTubeには1番までのやつしか上がっていないのだけど、どこかのタイミングでフルのやつを上げてやってほしかった。

インタビューとか

インタビューのページに移しました。

2ndアルバム『猛烈リトミック』

全体

NOW ON AIR

「オレンジ」「pray」を聴いたあと、赤い公園の過去の曲をさかのぼって聞いているときに一番ポップだと思った曲。7年前というのが意外だった。もう少し長いことマニア寄りな音楽をやってきてから最近ポップ路線に振れたバンドなんだと勝手に思っていたから。
出だしのひずんでこもったギターの音はいかにもロックという感じですごく好きで、キーボードの音と合わせて空へ抜けるような開放感がある(自分はこういう好きなギターソロはだいたい「空へ抜けるような感じ」がするのでまあ「なんかとにかくいい」ぐらいの意味と思ってください)。そのあとのギターのフレーズからまたキーボードが入って、ふっと一番の頭につながるところまでも気持ちいいアレンジ。ちょっとかわいいくらいのAメロから、ぐっとためて「Please don't stop the music, baby!」と歌い上げるBメロ、そしてラジオに呼びかけるサビ、どれも心に残る旋律と言葉で、短い期間で書かれたというのが信じがたい。
構成はAABサビABサビ落ちサビサビサビで、きわめて王道的だけれど赤い公園ではこのようにAメロBメロサビを律義に繰り返す構成はたぶん初めて。ここにプロデューサーの蔦谷氏の意向が入っているのかはちょっとわからない。『公園デビュー』まではABABサビサビとか、もっと繰り返しが少なくて短い曲が多い。
ハンドクラップのところや、満を持して一回だけ歌詞に登場する「now on air」、佐藤さんの高音が映える音域でこれでもかと繰り返されるサビ、あざといほどの作りで解散ライヴまで歌い継がれるバンドの代表曲となった。
後になってインタビューを読んでいたら、アルバムに入れる曲を考えているときに「名曲が足りないと思ったから作った」みたいなことを津野さんが言っていて仰天した。この人はポップな名曲ならいつでも書けるぐらいの感じの人なんだなと思っていた(当たり前だがそんなことはなかった)。
個人的にはすごく好きな曲だけれど、ここまでの歩みからは少し違うほうに踏み出したとも思える。MVを見ても「こういう風に売っていきたかったんだろうな」というのはなんとなく透けて見えるが、このバンドはそんなところには収まらなかった、とは言えるのかな。(MVが悪いわけではない、むしろとてもよくできていると思う。)

  • ラジオ賛歌なのでプロモーションの時どこのラジオ局に行っても歓迎されたみたいなエピソードをどこかで読んだのだが、さもありなんと思うしいい話だ。

絶対的な関係

108

いちご

誰かが言ってた

先へ先へ弾むようなリズムに乗る軽妙なメロディが楽しい曲だけど、歌詞はめずらしくボンクラ男子がぐずぐずしている内容。「誰より近くに居る」と言っているのに「君の事なら*わりと*知ってる」という情けなさ。「大宮サンセット」かおまえは。
サビはちょっとマイナーで、急に手が届かない悲しみっぽい雰囲気を出してくるのが面白い。間奏のカウベル三連打とか、間奏と後奏のハンドクラップ?とか、歌詞の最後の一行とか、楽しいんだけどなにかペーソスみたいなものがある曲だと思う。

TOKYO HARBOR

ひつじ屋さん

サイダー

チャイムの音、たぶんあえてリアルにしていないシンセっぽい音ではじまる。ノイズ(シンバル?)をはさんでギターリフへ。このギターリフが素晴らしいフレーズで、この曲はこれだけで半分勝っている感じがする。
佐藤さんの「スパイみたいに」の歌い方がいい。秘めた感情をスパイって単語であらわすのも中々だけれど、それを囁くような声で歌うのすごくないですか。自分はこの曲を聴くとき必ずこの「スパイ」のところで耳を澄ませてしまう。ななめうしろ。相手には自分が見えていて。
二番の前半でギターリフと同じフレーズが裏で小さく鳴っているんだけど、これがなんというか楽しそうに弾いている感じがしてすごくいいんだよね。特に凝ったことはしていないんだけど、津野さんこのリフは好きだったんじゃないだろうか。
バンドの看板になってもよかった名曲だと思うぐらい自分は好きな曲なのだけど、後から知った身からはどうも不遇な曲という気がしてならない。同じアルバムにNOW ON AIRと絶対的な関係があって、MVも作られるはずが半分で放置されてしまって完成せずじまい、シングルにもならず。
石野さんが入ってからもリファーストツアーではセットリストに入っていたもののそのあとはあまり機会もなく、音源になる機会もなかった。個人的には残念。

楽しい

牢屋

お留守番

風が知ってる

MV

NOW ON AIR

https://www.youtube.com/watch?v=gQpMiooyBWM
広い部屋の床に思い思いの向きや姿勢で横たわる三十数人の女の子たち(おそらくはラジオを聴いている)に混じっているメンバーたちが歌ったり演奏していたりするさまを、クレーンカメラで真上からゆっくりなめていくという映像。なんか説明するとめちゃくちゃ変な感じになってしまうな。

  • ラスサビ前の歌川さんがカウベル叩くところは最高に面白くて好きなのだけど、情熱公園(メイキング映像)でも津野さんがそのシーンを見て「ドヤ顔」と言いながら爆笑しているくだりがあって、なんかちょっと嬉しかった。

絶対的な関係

https://www.youtube.com/watch?v=qyKBoVV51Ls
「1秒×100カット」というシンプルなコンセプトで作られているMV。ところどころ不思議な映像やコミカルなカットもありつつ、全体的にはかっこいいMVになっていて、この曲の硬い感じとよく合っている。
短いカットをつなぎつつ、その中央に「何秒/何カット目か」をあらわす数字が入っているのだけど、それにはCGなどを使わずすべて実物を用いているので、撮影時には大きさ合わせなんかがめちゃくちゃ大変だったらしい。メンバーが入っている時間だけでも24時間ぐらい、スタッフはさらに長くかかったとか。

ひつじ屋さん

「ひつじ屋さん」 カラオケDAM今だけクリップ ティーザー
https://www.youtube.com/watch?v=DzF-xyj-w3s
これはティーザーだけで肝腎なところにさしかかる手前で終わってしまうが、この後ヤギやヒツジの中に入り混じって演奏したり、帰りにみんなで羊料理を食べに行ったりするはちゃめちゃなMV。

サイダー

赤い公園】 「サイダー」 WEB CM素材【キャッチコピー募集中】
https://www.youtube.com/watch?v=rIHa1MwSZu0
これは最後まで作られていない。下のサイダー協会関係を参照のこと。めずらしく藤本さんと歌川さんだけが出演しているMV。

風が知ってる

https://www.youtube.com/watch?v=D8c6pMIjYcc
風に吹かれるメンバーと、その風に舞うさまざまなものが印象的なMVだが、舞い散る札束は現金だったという話が「情熱公園」に出てくる。マネージャーやスタッフが30万円、50万円という感じで持ち寄ったらしい。

ライヴ

絶対的な関係

https://www.youtube.com/watch?v=Dvu5ZoOHAiM
FM802の企画(?)。津野さんのキーボード、歌川さんのドラム、藤本さんのタンバリンという編成。原曲よりはちょっとゆっくりで、なんか妙な味がある。

絶対的な関係(熱唱祭り)

https://www.youtube.com/watch?v=y7z_eLaHxZs
『赤飯』初回限定の熱唱祭り盤DVDから、この曲が公式で紹介されていたようだ。一番よく知られていた曲だから、ではあるのかもしれない。なんだかんだ言って地上波のドラマというのは強いと思わされる。

インタビューとか

→インタビューはインタビューのページに移しました。

エンタメOVO -- 赤い公園、「サイダー協会」設立でキャッチコピー募集
https://tvfan.kyodo.co.jp/music/news-music/928997
上のMVの項に載せた「サイダー」の前半だけのMVだが、このような企画があったらしい。どういう理由でかこの企画は完成せず、「サイダー」のフルMVは作られずじまいだった。もったいないことだと思う。「サイダー」はシングルになるに値する曲だったと思うが、結局フルのMVすら作られず単体の配信だけに終わってしまった。
ひょっとするとこの件は翌年の事務所の移籍の遠因になっていたりするのかもしれない……と思ったが、津野さんはラジオ「TOKYO HOT 100」にゲスト出演したときには円満移籍ですと語っている。まあ喧嘩別れしましてともわざわざ言わないだろうけれど、トラブルがあったのならちょっといろいろありましてぐらいのことは言いそうにも思う。

UNIVERSAL MUSIC JAPAN -- サイダー協会
https://www.universal-music.co.jp/cider/
サイダー協会のサイト。なんかさびしい。