3rdアルバム『純情ランドセル』
全体
曲
ボール
『純情ランドセル』を初めてかけた時、この曲のイントロにはっとしたことを今でも憶えている。まさかこんな音が流れてくると思わなかったという驚きもあったし、その音自体の美しさにも心を動かされた。鉄琴の、ちょっと小気味いいフレーズ。
鉄琴にかぶせてドラムが入ってきて、そのあとキーボード、ベース、ギターも加わって重々しい音になるんだけどこれがかっこいい。地球を宇宙に浮かぶボールに見立てる大局観が音になっていて、鉄琴はその上で輝く街の光か、それとも降り注ぐ星の光か。
「ああ私たちは神様のボールに」のところのベースは音階も音の歪み具合もすごい。そして佐藤さんのヴォーカルもこの曲ではかっこよく、しかも“昭和の23歳”らしい色気があると思う。
東京
西東京
新事務所の社長からのお題で「東京」という曲を書きあげた津野さんがその照れを原動力に書いたセルフアンサーソング(だと思う)。しっとりした「東京」に対しておりゃーっという勢いに満ちたロックンロールで、意外なほどバンドにはまった曲。
こういう曲でも本当に歌川さんのドラムはつんのめらなくて正確に速い。ひずんだギターは不協和音をかき鳴らし、ベースが涼しい様子でぶっとい音を並べる。Bメロの「新宿下北原宿渋谷の」の小気味いいことと言ったらない。
そしてサビの舞台設定に新青梅街道と田無タワーを持ってくるサービス精神。石野さんが加入してからもフェスでやってたらしいのでローカルソングとはいえ本人たちも気に入っていたのだろう。ラストライヴでもメドレーの中で披露された。
ショートホープ
まずドラムに耳が行く。もともとは津野さんが自分で叩いて作ったということだけど、仕上がりはめっちゃかっこよくなった。インタビュアーが人力で叩いていることを驚いていた歌川さんのドラム、本当にクールで、四小節で曲の空気を作ってしまう。
この曲はリズム隊がとにかくよくて、藤本さんのベースは重く、少しだけ後ろに引っ張るみたいなグルーヴを作っていてこれまた渋い。そこへ乗る佐藤さんのヴォーカルが大人の雰囲気。「だーいだーい」のところのかすれ具合が絶妙で、めっちゃ聴かせる。
ラストライヴでもやってくれたのだけど、石野さんがこの曲を手のうちに入れつつあるのがわかって凄かった。たとえば「だいだい」のところはちゃんと石野さんのものになっていた。こういう驚きと楽しみをもっと味わいたかったなと思う。
デイドリーム
あなたのあのこ、いけないわたし
いろんな曲にこう言っているがこの曲もイントロがかっこいい。冒頭のバスドラムが二拍入ってからギターが「(ちっ)じゃっ」と入ってキーボードへつながる二秒ぐらいの流れがすごくいい。やっぱり津野さんが考えたんだろうか。
行き止まりの恋を描いた歌だが、曲は驚くほど明るく美しいので面食らう。イントロから使われるキーボードが耳に残るフレーズを奏でて印象的。サビはこれでもかとばかりに上昇音階の連発なのに、シーソーは決してひっくり返らない。2番のサビでは伴奏がほぼキーボードだけになって、ふわふわと浮かぶようなフレーズの上にヴォーカルが乗って、恋の不毛さが頂点に達する。曲と詞の組み合わせが見事だ。これははっきり意図してやったようで、津野さんによると
生々しい内容の歌詞ではあるんだけど、サウンドがポップだから許されるというのもあると思いますね。そのあたりはaikoさんを見習ってるところがあるかもしれない。aikoさんって重たい内容の曲であればあるほどアップテンポにしていると思うんですよね。とのこと。
純情ランドセル特設サイト -- LINER NOTES & INTERVIEW (Web Archive)
喧嘩
14
ハンバーグ!
イントロの音がちょっとレトロフューチャーっぽい。後ろに入ってる「ぴゅーぴゅーぴゅーぴゅー」みたいな感じの音が特にそういう感じする。一周してかえって古くさくはない(かもしれない)。
一拍目をぐっとためる符割りがAメロ(「こっ ぴどく」)からBメロ(「もう ずーいぶん」)にかけて断続的に続いているのが面白くて、独特のリズムを作り出している。たぶん名前ありそうだけどわからない。パーカッションや全員のコーラスもちょこちょこ入っていて、わちゃわちゃしてる楽しい曲。その中でベースがよくて、ちょっとずつ入ってるいろんな楽器のフレーズをずーっと底で支えている。
アウトロはイントロと対になっていて、なんかやたらかっこいいというか、「どやっ」って感じで終わるのでおもしろい。
津野さんはマザコン感満載の歌詞と言っていたみたいだけどそこまでではなく、むしろかわいい歌詞だと思う。ひき肉こねた手のくだりが妙な生々しさがあって好き。
ナルコレプシー
冒頭から入ってる指パッチンの音が生々しい。人力ではあんな風に鳴らせないから津野さんはそれが面白いと思ってやっていると思うのだが、自分は最初腕が二本生えている機械みたいなのを想像してしまってちょっと怖いと思った。すぐに気にならなくなったけど。
キーボードの音がやわらかく、おだやかなメロディの曲。ヴォーカルはオーヴァーダビングを使い倒していて、左右から交互に聴こえてきてゆっくりと引きずりこまれるような感覚がある。眠たい眠たい眠たい眠たい眠たい眠たいおなかいっぱいのところは圧巻。
この曲の作詞は藤本さんと津野さんのふたりがクレジットされている。全体に退廃的というか破滅的で、この言い方もあれだけどうっすらと死の雰囲気がある。デビュー前の合宿で作った曲だそうで、津野さんが歌詞を書くのに苦しんでいたら、藤本さんが書いてあげるよと言って書いてきてくれたというような話だったと記憶しているが、歌詞が書けなくて困っている津野さんにこんな詞を持ってくる藤本さんはほんとうにすごい。そしてその歌詞からこの曲を作った津野さんも見事だ。
KOIKI
イントロのめっちゃかっこいいドラム
https://twitter.com/u__takos/status/654867349103771648
から、ドラムが一旦叩き止めてギターが入ってくるところがいい。序盤のメロディは佐藤さんのヴォーカルのクールなところがよく出るような音域で、佐藤さんもちょっとだけ抑えめに歌っているように思える。YouTubeのコメント欄で「ピチカートファイヴっぽい」と書いている人がいたが、この曲の、特に出だしは確かにピチカートファイヴっぽい。
ベースがまた変幻自在で、曲を通して様々なフレーズを奏でるが、落ちサビのところでギターと絡むところは絶品。そこから最後のサビに雪崩れこみ、ここだけ1ライン「あきれて笑うあなたのそばで」という詞が差しこまれる構成も見事と思う。
黄色い花
おやすみ
MV
KOIKI
https://www.youtube.com/watch?v=ZQuKiqq6sg8
演奏を始める時に津野さんが腕を伸ばして袖をまくるところが最高にかっこいい。YouTubeには1番までのやつしか上がっていないのだけど、どこかのタイミングでフルのやつを上げてやってほしかった。
インタビューとか
→インタビューのページに移しました。
2ndアルバム『猛烈リトミック』
全体
曲
NOW ON AIR
「オレンジ」「pray」を聴いたあと、赤い公園の過去の曲をさかのぼって聞いているときに一番ポップだと思った曲。7年前というのが意外だった。もう少し長いことマニア寄りな音楽をやってきてから最近ポップ路線に振れたバンドなんだと勝手に思っていたから。
出だしのひずんでこもったギターの音はいかにもロックという感じですごく好きで、キーボードの音と合わせて空へ抜けるような開放感がある(自分はこういう好きなギターソロはだいたい「空へ抜けるような感じ」がするのでまあ「なんかとにかくいい」ぐらいの意味と思ってください)。そのあとのギターのフレーズからまたキーボードが入って、ふっと一番の頭につながるところまでも気持ちいいアレンジ。ちょっとかわいいくらいのAメロから、ぐっとためて「Please don't stop the music, baby!」と歌い上げるBメロ、そしてラジオに呼びかけるサビ、どれも心に残る旋律と言葉で、短い期間で書かれたというのが信じがたい。
構成はAABサビABサビ落ちサビサビサビで、きわめて王道的だけれど赤い公園ではこのようにAメロBメロサビを律義に繰り返す構成はたぶん初めて。ここにプロデューサーの蔦谷氏の意向が入っているのかはちょっとわからない。『公園デビュー』まではABABサビサビとか、もっと繰り返しが少なくて短い曲が多い。
ハンドクラップのところや、満を持して一回だけ歌詞に登場する「now on air」、佐藤さんの高音が映える音域でこれでもかと繰り返されるサビ、あざといほどの作りで解散ライヴまで歌い継がれるバンドの代表曲となった。
後になってインタビューを読んでいたら、アルバムに入れる曲を考えているときに「名曲が足りないと思ったから作った」みたいなことを津野さんが言っていて仰天した。この人はポップな名曲ならいつでも書けるぐらいの感じの人なんだなと思っていた(当たり前だがそんなことはなかった)。
個人的にはすごく好きな曲だけれど、ここまでの歩みからは少し違うほうに踏み出したとも思える。MVを見ても「こういう風に売っていきたかったんだろうな」というのはなんとなく透けて見えるが、このバンドはそんなところには収まらなかった、とは言えるのかな。(MVが悪いわけではない、むしろとてもよくできていると思う。)
- ラジオ賛歌なのでプロモーションの時どこのラジオ局に行っても歓迎されたみたいなエピソードをどこかで読んだのだが、さもありなんと思うしいい話だ。
絶対的な関係
108
いちご
誰かが言ってた
先へ先へ弾むようなリズムに乗る軽妙なメロディが楽しい曲だけど、歌詞はめずらしくボンクラ男子がぐずぐずしている内容。「誰より近くに居る」と言っているのに「君の事なら*わりと*知ってる」という情けなさ。「大宮サンセット」かおまえは。
サビはちょっとマイナーで、急に手が届かない悲しみっぽい雰囲気を出してくるのが面白い。間奏のカウベル三連打とか、間奏と後奏のハンドクラップ?とか、歌詞の最後の一行とか、楽しいんだけどなにかペーソスみたいなものがある曲だと思う。
私
TOKYO HARBOR
ひつじ屋さん
サイダー
チャイムの音、たぶんあえてリアルにしていないシンセっぽい音ではじまる。ノイズ(シンバル?)をはさんでギターリフへ。このギターリフが素晴らしいフレーズで、この曲はこれだけで半分勝っている感じがする。
佐藤さんの「スパイみたいに」の歌い方がいい。秘めた感情をスパイって単語であらわすのも中々だけれど、それを囁くような声で歌うのすごくないですか。自分はこの曲を聴くとき必ずこの「スパイ」のところで耳を澄ませてしまう。ななめうしろ。相手には自分が見えていて。
二番の前半でギターリフと同じフレーズが裏で小さく鳴っているんだけど、これがなんというか楽しそうに弾いている感じがしてすごくいいんだよね。特に凝ったことはしていないんだけど、津野さんこのリフは好きだったんじゃないだろうか。
バンドの看板になってもよかった名曲だと思うぐらい自分は好きな曲なのだけど、後から知った身からはどうも不遇な曲という気がしてならない。同じアルバムにNOW ON AIRと絶対的な関係があって、MVも作られるはずが半分で放置されてしまって完成せずじまい、シングルにもならず。
石野さんが入ってからもリファーストツアーではセットリストに入っていたもののそのあとはあまり機会もなく、音源になる機会もなかった。個人的には残念。
楽しい
牢屋
お留守番
風が知ってる
木
MV
NOW ON AIR
https://www.youtube.com/watch?v=gQpMiooyBWM
広い部屋の床に思い思いの向きや姿勢で横たわる三十数人の女の子たち(おそらくはラジオを聴いている)に混じっているメンバーたちが歌ったり演奏していたりするさまを、クレーンカメラで真上からゆっくりなめていくという映像。なんか説明するとめちゃくちゃ変な感じになってしまうな。
- ラスサビ前の歌川さんがカウベル叩くところは最高に面白くて好きなのだけど、情熱公園(メイキング映像)でも津野さんがそのシーンを見て「ドヤ顔」と言いながら爆笑しているくだりがあって、なんかちょっと嬉しかった。
絶対的な関係
https://www.youtube.com/watch?v=qyKBoVV51Ls
「1秒×100カット」というシンプルなコンセプトで作られているMV。ところどころ不思議な映像やコミカルなカットもありつつ、全体的にはかっこいいMVになっていて、この曲の硬い感じとよく合っている。
短いカットをつなぎつつ、その中央に「何秒/何カット目か」をあらわす数字が入っているのだけど、それにはCGなどを使わずすべて実物を用いているので、撮影時には大きさ合わせなんかがめちゃくちゃ大変だったらしい。メンバーが入っている時間だけでも24時間ぐらい、スタッフはさらに長くかかったとか。
ひつじ屋さん
「ひつじ屋さん」 カラオケDAM今だけクリップ ティーザー
https://www.youtube.com/watch?v=DzF-xyj-w3s
これはティーザーだけで肝腎なところにさしかかる手前で終わってしまうが、この後ヤギやヒツジの中に入り混じって演奏したり、帰りにみんなで羊料理を食べに行ったりするはちゃめちゃなMV。
サイダー
【赤い公園】 「サイダー」 WEB CM素材【キャッチコピー募集中】
https://www.youtube.com/watch?v=rIHa1MwSZu0
これは最後まで作られていない。下のサイダー協会関係を参照のこと。めずらしく藤本さんと歌川さんだけが出演しているMV。
風が知ってる
https://www.youtube.com/watch?v=D8c6pMIjYcc
風に吹かれるメンバーと、その風に舞うさまざまなものが印象的なMVだが、舞い散る札束は現金だったという話が「情熱公園」に出てくる。マネージャーやスタッフが30万円、50万円という感じで持ち寄ったらしい。
ライヴ
絶対的な関係
https://www.youtube.com/watch?v=Dvu5ZoOHAiM
FM802の企画(?)。津野さんのキーボード、歌川さんのドラム、藤本さんのタンバリンという編成。原曲よりはちょっとゆっくりで、なんか妙な味がある。
絶対的な関係(熱唱祭り)
https://www.youtube.com/watch?v=y7z_eLaHxZs
『赤飯』初回限定の熱唱祭り盤DVDから、この曲が公式で紹介されていたようだ。一番よく知られていた曲だから、ではあるのかもしれない。なんだかんだ言って地上波のドラマというのは強いと思わされる。
インタビューとか
→インタビューはインタビューのページに移しました。
エンタメOVO -- 赤い公園、「サイダー協会」設立でキャッチコピー募集
https://tvfan.kyodo.co.jp/music/news-music/928997
上のMVの項に載せた「サイダー」の前半だけのMVだが、このような企画があったらしい。どういう理由でかこの企画は完成せず、「サイダー」のフルMVは作られずじまいだった。もったいないことだと思う。「サイダー」はシングルになるに値する曲だったと思うが、結局フルのMVすら作られず単体の配信だけに終わってしまった。
ひょっとするとこの件は翌年の事務所の移籍の遠因になっていたりするのかもしれない……と思ったが、津野さんはラジオ「TOKYO HOT 100」にゲスト出演したときには円満移籍ですと語っている。まあ喧嘩別れしましてともわざわざ言わないだろうけれど、トラブルがあったのならちょっといろいろありましてぐらいのことは言いそうにも思う。
UNIVERSAL MUSIC JAPAN -- サイダー協会
https://www.universal-music.co.jp/cider/
サイダー協会のサイト。なんかさびしい。
1stアルバム『公園デビュー』
全体
曲
今更
自分は「オレンジ」「pray」の次ぐらいにYouTubeで触れた曲で、正直最初は変な曲だなと思っていた。芝居がかったヴォーカル、謎のダンス、意味不明の歌詞、最後走り去ってしまうメンバー。何回か見たが、見るたびに画面の前でぽかんとしてしまった。
しかしこれが癖になるというか、いつしか好んで見るようになっていた。たぶんこの辺りで自分は赤い公園というバンドを好きになったなと思った。その一、二週間後ぐらいに解散が発表された。その時はただ仕方ないことだろうとだけ思った。まだその程度だったから。
じゃっ、じゃっ、じゃっ、じゃっ、というギターのイントロから静謐なAメロへ、そこから緊張感のあるBメロへ。ちょっとためて、爆発するように「バックオーライ」のサビに入る、緩急の使い方とための解放がほんとうに見事で、慣れるとこれが何度も味わいたくなる。
落ちサビから、もう一回ダメ押しの爆発があってメンバーが走り去り、ギターのアウトロが余韻を残して終わるまで全部で3分足らず。メロディやアレンジも素晴らしいが、おそろしい構成力だと思う。
のぞき穴
つぶ
タイトルといい歌詞といい序盤の伴奏といいシンプルというかアブストラクトという感じの曲。一番では左耳からベース右耳からギターで、二番ではそれが逆になっている。どちらかというとベースメインでギターが添え物っぽいのはいかにもこのバンドらしい伴奏。
サビでは一気に楽器が増えて分厚い音になるのだけど、ここの響きがなんともやわらかいところがすごくよくて、聞いていて気持ちいい。二番のサビの後はめちゃくちゃあっさり終わる。二分も経っていないのに、まあやりたいことはやったし、と言わんばかり。
交信
体温計
もんだな
急げ
カウンター
疾走感あふれる2分少しの曲だが、ちょっとずつ意外な構成をとっていておっと思いながら聴く。AメロからBメロに行くところ、コーラスが入ってすぐに「みーのってゆくもの」と先へ進む。2回目のBメロではギターがちょっと不思議なフレーズをずっと奏でていて耳にひっかかる。
サビはそれこそフェスに来る海外のスリーピースバンド(二番目のステージの午前中とかに出てる)みたいな全力疾走で好き。そこから落ちサビまでの短い中間部も楽しいし、落ちサビでドラムとベースだけになるところのカッコよさたるやない。
ロックンロールを手のうちに入れているし、それでいてトリッキイでポップで、個人的にはかなり好きな曲。これはライヴで、佐藤さんのヴォーカルで聴いてみたかった。
贅沢
キーボードとアンデス(仮)*1がメインでギターはラスサビにちょっと入ってるだけなのかな。ドラムが面白い使われ方をしていて、特にAメロは1番も2番もこれどう来るんだという入り方をして楽しい。沸騰が近いお湯の揺れ方のような。
アンデスはかなり細い音で高い音程を奏でて、ちょっと剽軽な、それでいてなにか切なく懐かしい音で胸に迫る。一方で佐藤さんはこの曲はかなり明るく歌っていて、歌詞にはそこはかとなく不穏なところがあるのでちょっと狂ってる感じがする。
ぱっと聴くと童謡っぽい要素がいくつかあるんだけど、こんな童謡はないかなとも思う。「毎晩内緒で時計の針をずらす」という歌詞は物語が感じられて好き。
くい
インタビューとか
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MV
今更
https://www.youtube.com/watch?v=HvO8QXTZxts
なんとも奇妙なMV。千葉県の牧場で撮ったそうで、よく見ると途中で左後方に馬が見えたりする。演奏する→踊りながら後ろに下がる→また楽器のところで演奏する→交代する→踊りながら下がる→もう一度交代する→道に出て走っていく、という流れなんだけど、途中の交代のところでは実際に影武者に交代している。最初、というかけっこう長いことこれが影武者であることを全然わかっておらず、なにかそういう撮影技術なんだと思っていた(カイリー・ミノーグの「Come into My World」みたいな)。ほえー最近の映像技術はすげえぜと思い込んでいたのだが、影武者だと聞いて納得すると同時にそれはそれですげえなと思った。ルックスの寄せ方がすごくないですか。
振り付けは入手杏奈氏。津野さんの影武者もこの人が演じているとのこと。→https://twitter.com/nnaeii/status/1318386070086504451
ダンスがけっこう難しいのでメンバーはスタジオに入ってダンスだけ練習したりもしたらしい。
交信
*1:リコーダーぽい音を奏でている楽器、鍵盤リコーダー(鍵盤ハーモニカに笛がついているやつ)ではないかという説がTLで出て、それの商品名がアンデスらしい。→andes 25F | 鈴木楽器製作所
ミニアルバム『ランドリーで漂白を』
全体
曲
ha・ji・ma・ru・KOIGOKORO
ナンバーシックス
個人的には情熱公園のテーマという印象がある(それで初めて聴いたので)。カウベルのイントロから面白いコーラスの入るAメロ、少しメロウな雰囲気になるBメロとそれぞれにいいのに、どちらも一回で使い捨ててしまう。
サビはメロディそっちのけでギターとベースのフレーズがノリノリで、そちらに乗って頭を振ってしまう。「おどーる」のところで声が裏返りかけるのが気持ちよくて、これが津野さんの求めていたもののひとつではないかと思う。
二回目のサビでは男女のコーラスとフィンガースナップの音だけがバックに流れて、これがまた楽しい。もう一度サビを繰り返して、カウベル、鉄琴ぽい音とちょっとずつ入って終わり。
上質のメロディと様々な音のアイデアをたった二分にぎうぎう詰め込んだ恐ろしくカロリーの高い曲で、さらに普遍的なポップネスも獲得している。なかなかにすごい曲だと思う。ラストライヴではメドレーで披露されたが、贅沢を言えばフルで聴きたかった。
uh-huh, OK?
よなよな
Somewhere Over the Wink
血の巡り
Prism On the Picture Vol.16
ランドリー
Children Go Home With the Crow
何を言う
インタビューとか
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ミニアルバム『透明なのか黒なのか』
全体
曲
塊
season of mine
透明
Yes, lonely girl
潤いの人
please please love mode
副流煙
CRAZY 4 U '12 winter ver.
世紀末
シンセの短い音がうねるように上下しつつ、ドラムがどどったっ、どどったっ、と入るイントロ。なるほど世紀末という感じもしなくもない(しかし世紀末っていつなんだろう?)。「君は見当たらない」のところで三回入るカウベルはためが利いていて好き。
最後のサビではリコーダーが入り、同時に短く切られた「あ」「あ」というバックボーカルがたくさん重ねられる。不思議とあっけらかんとした雰囲気で、歌詞も意味がわからないけど字面から想像されるような不気味さは全然ない。そして短い初登場のシンセのフレーズが入って終わり。
佐藤さんの、特に冒頭の歌い方、にゅーっと引っ張るような声の出し方で初期以外ではあんまりやってない気がする。いろいろ工夫されていたのだな。
インタビューとか
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11thシングル「オレンジ/pray」
全体
ドラマ『時をかけるバンド』のオープニング&エンディング&挿入歌。
曲
オレンジ
自分が初めて聴いた赤い公園の曲。
YouTubeでリコメンドされたとか、そんなきっかけで聴いたと思う。とにかく主体的に赤い公園というバンドの曲を聴こうとしたわけではまったくなかった。それでもバンドの名前と、メンバーが変わったことと、不幸があったことだけは知っていた。すごくいい曲だった。三回聴いてからは毎日聴いた。飽きたくないから一日一回と決めて、毎回味わって聴いた。
この曲の好きなところは多すぎてなにを書けばいいかわからないけど、威勢のいい曲なのに乗っているメロディがどこか切なくて、それをまたなにか哀愁のある雰囲気のボーカルが歌っているのがすごくよかった。この曲の石野さんは大げさに表に出しはしないけれど悲壮感のようなものをたたえていると思う。「ちがう ちがう」のところの振りが好きになった。
アレンジもよかった。「それをくり抜いた私」の直後のベースライン。津野さんがピックを咥えて椅子に座り、メロディに重ねられるキーボードの音。最後のサビの「沈んだオレンジ」のところの渾身のドラム。聞くたびに発見があって、しみじみいい曲だと感じた。
MVの最後に、メンバーの名前の入ったイラストが流れる。自分は普通にありがたかったけど、あらためて考えると、結成10年のバンドがこれをするのは明らかに意図があったはずだ。きっとこの曲で自分たちを初めて知る人が数多くいるはずだという自信があったのではないか(裏返せば自分たちはまだまだ顔が売れていないだろうという自認をしていたことにもなる)。そしてそれは想像しなかったであろう形で現実のものになってしまうわけだが……。古塔つみ氏のイラストはその意図に応える素晴らしいものだった。
pray
最初は綺麗な曲だな、くらいの印象だったが、すぐにオレンジとセットで聴くようになった。おそろしく美しいメロディで、歌詞とMVの映像も併せて別離を想像させずにはおかない。偶然だとわかっていても、どうしてこの曲が残されたんだろうと思ってしまう。
衛星
MV
オレンジ
演奏風景だけのシンプルなMV。石野さんの表情がちょっと物憂げなのがよい。2番で津野さんがピックを加えてキーボードの前に座るところと、逆に間奏の前に立ち上がってギターを弾き始めるところが見もの。それにしてもみんな楽しそうに演奏するよね。
- 実際にはキーボードの前に座ってからもギターの音が鳴っている。唯一この曲を津野さんがライヴで演奏した SHOKA TOUR DAY 0 ではキーボードは使わなかった。
pray
四人が日帰り旅行に行くイメージの映像。ロケ地は房総半島なのかな。喫茶店で軽食を食べる、レンタカーでドライブする、遊覧船に乗る、などの場面が短くつながれるが、津野さんのことを知ってからこの映像を見て暗示的なものを感じない人はほとんどいないだろう(そしてこのCDは2020年11月にリリースされたのでほとんどの人は知っていたはずだ)。喫茶店でひとり振り向く津野さん、車から降りてこない津野さん。ただそれは切なくて美しい思い出の旅のひとこまに過ぎなかっただけであろうのに。
美しい映像と美しい曲で、「オレンジ」と併せてこのMVが残されてよかったと言える作品。赤い公園最後のMVとなった。
- 「オレンジ」「pray」ともに監督はスミス氏とのこと。参照→SMITH -- WORKS 『時をかけるバンド』でも監督としてクレジットされている。